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流水のめい

振り向けば寡黙なあいつ

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振り向けば寡黙なあいつ

都内のとあるプロダクションにて打ち合わせをしていた時の話。
僕とその会社の担当者は、小さな会議スペースで仕事の内容について話をしていた。パーテーションの向こう側では大勢の社員がわいわいと働いていた。
対照的にこちらの打ち合わせは少々難航していた。なので当然、沈黙になる思考タイムが多かった。
そんな時、必ず聞こえる妙な音があった。しゃ、しゃ、しゃ、しゃ、しゃ……と。
最初は特に気にならなかった。しかし一度気になってからはもうダメだった。
会話が途切れる度に僕の意識は奪われた。担当者は難しい顔で考え事をしていた。そんな時に「この音、なんスか?」なんてお気楽な質問が出来るほど僕は太くなかった。
ただ、音の正体だけはどうしても知りたかった。どうしても知りたくなった。もう完全に仕事どころではなくなってしまった。
担当者に気付かれないよう音の方向に首を伸ばした。
それはパーテーションの向こう側だった。位置はかなり低い。おそらく足元すれすれだと思う。そんな所でいったい何が唸っているのだろう?音は右から左へ移動していた。僕は意識の全てを集中させた。
そして担当者の声が聞こえなくなった。まあ当たり前の話である。
「聞いてますか?」担当者の尖った声に我に戻る。ああスイマセン昨日は徹夜だったので――と口から出まかせを言う。優しい担当者は「熱いコーヒーでも入れましょう」と言って席を立った。いい人なのだ。それに比べて自分って奴は……
しかしそうは言ってもこれはチャンスだった。
この隙にパーテーションの向こう側を覗いてしまえば、謎の音の正体を突き止める事ができる。社内には独特の重い空気が張りつめている。社員達の邪魔はできない。僕はそーっと席を立った。
まずはコーヒーを入れに行った担当者の位置を確認する。彼はまだ給湯室だ法國紅酒
そのままそろりと足を進める。で、やはりパーテーションを蹴ってしまう。ばいーん、と白いアクリルパネルが音を立てる。やばっ、と思ったがオフィスの人達は誰も気付かなかった。忙しくてそれどころではないのだろう。この場で暇なのは僕だけだった。
気を取り直して歩みを進める。すると例のしゃ、しゃ、しゃ、と言う音がこちらに近づいてきた。近づいてきた?
一体何なんだ、怖い。僕はとっさにアカレヤシの鉢植えの影に隠れた。そして恐る恐る様子を窺った。そしてついに音の主が姿を現した。それは丸くて平べったい、全自動式掃除機だった。なんだ……なんだよ、いつもいつも去斑
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